20歳のころ、僕はフリーターで
某レンタルビデオ店でアルバイトをしていた。
そこは、なかなかお客さんのガラが悪く、
毎日のようにクレーム対応をしていた。
そんな僕の先輩だったのがKさんだ。
Kさんは3歳くらい年上でボロボロの金○成みたいな見た目だった。
Kさんは接客が恐ろしく苦手で
意図せずお客さんを怒らせることが多かった。
謝罪も下手だったので更に怒らせていた。
Kさんは、クレーム処理最中、緊張で口が砂漠になる。
長引くと乾いた唇に亀裂が走るのだ。
長いクレーム処理を終えて
バックヤードに返ってきたKさんが
「いやぁ〜のだくぅん。たいへんだったよぉ〜」
と言ってニコッと笑った口が血だらけで人食い殺してきたみたいで爆笑したのを覚えている。
Kさんはスタッフの8割くらいから嫌われていた。
仕事ができないのに上から目線で喋っているからだ。
でも、僕はKさんがきらいじゃなかった(好きでもなかった)
なぜなら観察していると面白かったからだ。
ある日、Kさんが店長に怒られていた。
「接客業なんだから清潔感をだせ!なんとかしろ!」
Kさんは、頭で回転しながら寝てるんじゃないかってくらい寝癖がひどかったからだ。
そして結構な頻度で唇も血だらけだ。
一応後輩だし、アドバイスをしてみた。
「Kさん、頭をジェルで固めるだけでもだいぶよくなると思うよ」
Kさんは興奮して
「ええ!!そうなのかい!それはすごいなぁ!!明日ためしてみるよぉ!」
次の日
Kさんが出勤したがいつもの頭で回転してきたみたいな髪型だった。
Kさんは僕の顔をみるなり話しかけてきた。
「の、ののだくん!昨日教えてくれたやつジャル?お店に行ったけどなかったよぉ!」
僕は、その後ビデオ店の社員に誘われたが丁重にお断りしてウェブデザイナーになった。
Kさんの連絡先は知らなかったのでビデオ店を辞めたあとは連絡を取る手段がなくなってしまった。
たまにKさんに似ている人をみかける。
その度にジェルをジャルといい間違ったエピソードを思い出してフフってなる。
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