広告の目的はただ“印象に残る”だけではありません。実際に売上に貢献する広告であることが重要です。
この記事では、広告クリエイティビティーの代表的な理論であるSmithetalの「5つの要素」に加えて、それぞれの要素が売上にどう影響したのかを実証的に分析したReinartz and Saffertの研究も紹介します。
クリエイティブの改善に悩むマーケター、広告制作者、ディレクター必読です。
Smithetalの「広告クリエイティビティー5要素」とは?
① 独自性(Originality)
他と違う新規性や意外性を持たせることで、視聴者の注意を引きます。
② 柔軟性(Flexibility)
複数の視点や文脈に対応でき、広く受け入れられる内容を持ちます。
③ 芸術性(Artistic Value)
映像美や音楽、構成などが視聴者の感性に訴え、好意的な印象を与えます。
④ 含意性(Elaboration)
すぐに全てを説明せず、視聴者に“考えさせる”構造があることで記憶に残ります。
⑤ 合目的性(Synthesis)
一見バラバラに見える要素が、最終的に一貫したメッセージに収束する統一性があります。
これら5つの要素が広告クリエイティビティの核とされています。
Reinartz and Saffertによる実証分析:売上に本当に効く要素はどれか?
2009年、Reinartz and Saffertは、27のブランド・426本のテレビCMを対象に、「クリエイティブ要素と売上効果の相関性」を調査しました。
分析の結果、Smithetalの5要素のうち、実際の売上向上に強く影響を与える要素と、そうでない要素が明らかになりました。
売上に最も貢献したのは「合目的性」と「独自性」
✅ 合目的性(Synthesis):◎強い売上効果
CM内のすべての要素(ビジュアル、コピー、音楽など)が「一つのメッセージ」に収束する広告は、売上向上にもっとも効果があるとされています。
消費者は“何を伝えたいCMなのか”が明確であるほど、購買行動につながりやすくなります。
✅ 独自性(Originality):◎中~強い売上効果
ユニークで意外性のある構成は、短期的な注目と記憶定着に寄与し、売上にも貢献。ただし、メッセージとの整合性が取れている場合に限るという前提があります。
売上効果がやや限定的だった要素
⚠ 柔軟性(Flexibility):△効果限定的
意図が複数の文脈に解釈できるCMは、話題性にはつながるが、メッセージが曖昧になりやすく、売上への直接的効果は限定的でした。
⚠ 含意性(Elaboration):△~×
「視聴者に考えさせる」表現は記憶には残るものの、明確な購買アクションにはつながりにくいことが判明しました。特に一回限りの接触で完結しないCMは、商品理解が薄れる可能性があります。
⚠ 芸術性(Artistic Value):×
芸術的な映像や演出は好意的な印象を与えるものの、売上への直接的な効果は最も低かったという驚きの結果です。
「綺麗なCM=売れるCM」ではない、という事実がここで浮き彫りになりました。
実務への応用:何を優先すべきか?
CMやWeb広告制作においては、以下の優先順位を意識するのが現実的です:
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メッセージの一貫性(合目的性)を最優先に
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意外性や独自の視点(独自性)で印象を残す
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芸術性や含意性は「補助的」に使う
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柔軟性はリスク管理しながらバランスを取る
失敗しがちなパターン例:
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ビジュアルは綺麗なのに、何の広告か分からない(芸術性偏重)
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謎解き要素に時間を割きすぎて、商品が覚えられない(含意性過剰)
【まとめ】売れる広告に必要なのは「構造」と「意味の一貫性」
Smithetalの理論は広告表現を構造的に理解するフレームワークを提供し、Reinartz and Saffertの研究はその理論が“現実に売上を上げるのか”を検証した貴重なデータです。
両者を組み合わせることで、単なる“オシャレな広告”ではなく、“売れる広告”へのヒントが見えてきます。
企業の広告戦略にこの知見をどう活かすか?
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広告代理店とのディレクション会議では、5要素と売上影響度をベースに議論すれば、表現の意図を明確にできます。
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自社商品紹介動画の内製時にも、「この構成は合目的性があるか?」と問い直すだけで、メッセージ精度が高まります。
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WebやSNS広告でも同様。目立たせるだけでなく、ユーザーに“買ってもらう意味”を届ける構造が重要です。
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