広告は「説得力」がすべてだと思っていませんか?
あるいは「目立てば勝ち」と信じていませんか?
マーケティングの現場でよく議論されるのが、「広告は説得すべきか、それともセイリエンス(顕著性)を高めるべきか?」というテーマです。本記事ではこの問いを深掘りしながら、Web広告・ディスプレイ広告・ランディングページなどの設計にどう落とし込むべきかを考察していきます。
「説得」とは何か?──メッセージで態度を変える力
広告における「説得」とは、ユーザーの考え方や態度に変化を与え、最終的な行動へと導くことを意味します。たとえば次のような手法がこれに該当します。
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論理的なベネフィットの提示(例:「他社より30%安い」)
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エビデンスのある訴求(例:「臨床試験済み」)
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専門家・インフルエンサーの推薦(信頼性の転移)
これは**精緻化見込みモデル(ELM)**でいう「中心ルート」に近い考え方で、ユーザーが情報をきちんと処理し、「納得」を経て購入や申込みに至るプロセスです。
説得型の広告は、**高関与商材(高額・リスク高・比較が必要なもの)**に強く、高い検討度をもつユーザーに対して有効です。
「セイリエンス(顕著性)」とは何か?──目立つことで記憶に残す
一方で「セイリエンス(salience)」とは、**情報の「目立ち度」や「記憶への残りやすさ」**を指します。行動経済学や脳科学の分野でよく使われる言葉で、広告においては以下のような要素がセイリエンスを高めます。
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パッと目を引く色・デザイン・動き
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感情を揺さぶるストーリーテリング
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ユーザーの日常と結びついたフレーズ(例:「今すぐ使える○○術」)
セイリエンスは、「ユーザーがその商品を“思い出せる状態”にしておく」ための戦略です。説得ではなく、認知と想起に重きを置いたアプローチだといえます。
これは、ELMでいう「周辺ルート」に近く、**低関与商材(即決系・日用品・衝動買い)**で非常に効果を発揮します。
広告に必要なのは「説得」か「セイリエンス」か?
結論から言えば、どちらか一方ではなく、どちらも重要です。なぜならユーザーの態度や状況、リテラシー、関心度によって、情報の受け取り方が変わるからです。
比較項目 | 説得(説得型広告) | セイリエンス(顕著性広告) |
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ユーザー状態 | 高関与・比較重視 | 低関与・直感型 |
重視する軸 | 内容・論理・納得 | 感覚・印象・記憶 |
想定される態度変容 | 慎重に検討し変化 | 覚えていて後で行動する |
例 | 医療・保険・不動産 | ファストフード・飲料・日用品 |
実務に活かす:どのように広告設計すべきか?
1. ターゲットの関与度を判断する
ユーザーが「この広告に関心をもって読み込んでくれるかどうか?」を判断しましょう。たとえば高額商品や専門性の高いサービスなら「説得」が必要。日常の小さな選択なら「セイリエンス」が有効です。
2. ランディングページでは「入口はセイリエンス、出口は説得」
ファーストビューで感覚的に惹きつけ、下部で納得を生む論理的構成がベスト。
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上部:ビジュアル・キャッチコピー・共感
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中部:メリット訴求・信頼性(レビューや実績)
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下部:CTA+限定感(行動促進)
3. バナー広告では「思い出させる」ことに集中する
バナーは“売る”というより「記憶に刷り込む」ツールと捉えましょう。広告を見た瞬間に買わなくても、「どこかで見たあの商品」としてユーザーの頭に残るかがカギです。
まとめ:「広告は説得かセイリエンスか?」という問いに答えるなら…
どちらかを選ぶのではなく、両方を理解して文脈で使い分けるのがプロの仕事です。
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ユーザーが真剣なら「説得」で攻める
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気軽な判断なら「セイリエンス」で残す
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両者を掛け合わせた“設計された広告”こそが強い
この考え方はWeb広告、LP、SNS投稿、YouTube動画広告など、あらゆるクリエイティブ施策に通用します。今の広告は「正しく伝える」だけではなく、「印象を残す設計力」が問われているのです。
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