“1匹のアリが宇宙を描く”──ラングトンのアリが語る、秩序とカオスの物語

ラングトンのアリとは何か?

「ラングトンのアリ」とは、1986年にコンピュータ科学者**クリス・ラングトン(Chris Langton)**が考案した、**セル・オートマトン(cellular automaton)**の一種です。

名前は可愛いですが、中身はとてつもなく深い数理的・哲学的な問いを内包しています。


ルールはたったの2つ。でも無限に面白い

アリ(エージェント)は無限に広がる格子状の世界(グリッド)の上にいて、白と黒のマスを進んでいきます。その行動ルールは以下の通り:

  1. アリが白いマスにいるとき → 右に90度回転して、そのマスの色を黒に変える

  2. アリが黒いマスにいるとき → 左に90度回転して、そのマスの色を白に変える

そして、1マス前進する。

以上。これだけ。


カオス → 秩序? 奇跡の“ハイウェイ現象”

最初はただの白いマスの中央にぽつんと立っているアリ。でも、動かし始めると…

  • 10ステップ → まだランダム

  • 100ステップ → なんだかグチャグチャ

  • 1,000ステップ → カオスの塊!

  • 10,000ステップ → え? 何か始まった?

  • 11,000ステップ以降 → 直線状の“ハイウェイ”を永久に構築し続ける

そう、このシンプルなアリは突然“秩序”に目覚めるのです。突如として“同じパターン”を繰り返すようになり、二度と混沌には戻らない。

これは多くの科学者を驚かせました。


「単純なルールから複雑な現象が生まれる」というメッセージ

ラングトンのアリが私たちに示すのは、シンプルな法則から予測不可能な挙動が生まれ、最終的に安定した秩序が姿を現すという壮大なパターンです。

これは以下のような領域にも通じます:

  • 進化論:単純な変異の繰り返しから高度な生命体系が生まれる

  • 経済学:単純な売買が複雑な市場を形成する

  • AIの学習:簡単なルールの繰り返しが、知性を作り出す

  • 人生哲学:日々の小さな選択が、大きな流れを生み出す


ちょっと触ってみたくなった?

実際にラングトンのアリはWeb上でもシミュレーションが可能です。

以下のようなサイトで試せます(例):

自分でステップ数を調整したり、複数のアリを同時に動かしたり、予測不可能な「秩序」を発見する驚きをぜひ体験してみてください。


まとめ:小さなルールが、大きな宇宙を動かす

「ラングトンのアリ」は、まるで禅問答のような存在。
なぜカオスが秩序に変わるのか? なぜ単純なルールから、意味ある形が生まれるのか?

この不思議な“アリの旅路”は、私たちが目の前の小さなステップを繰り返すことの意味を問い直してくれます。

次にあなたが何気なく選ぶその一歩も、未来の“ハイウェイ”につながっているのかもしれません。

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